~ウプスー~
牡牛と幽霊
昔、朝戸故市常吉氏の祖先に、メーダのウフウプスーと言うお方がいました。
薩藩時代の人で、農家に生まれ、親の後を継ぎ鍛冶職で、また、祈祷師でもあった。
ウプスーの作場は、前浜の東北で作小屋もあったという。当時牡牛を飼っていた。
その牡牛は、朝荷を括りつけると、前浜の作小屋まで、
ひとりでに行きウプスーが来るまで、小屋の前で待ち受けて、
荷を解くまで位置を離れることがなかった。
また、夕方作場で牛荷をつけたら、ひとりで帰り家の前でウプスーを待ち、
荷を解くと牛小屋にはいると言う、動物ながら人間同様な役目を果たす牡牛であった。
ウプスーは、自分の産みの子と同様可愛がって飼っていた。
或日作場で日暮れ遅くまで作業をして、牛荷を括り家に帰る際、
丁度前浜の上り坂の丘(道路の左側)は、昔、島見い丘(ミヨバナ)といわれ
死者が最後の別れとして、島を眺めさせるため、死人の棺を一応肩からおろした丘である。
其の丘の付近に到達した時、牛は立ち止まり鼻息を連発して全身しないので、
綱で尻を打っても進まない、牡牛は、後を向いてウプスーを牛の脇腹に前の片足で抱え込んで、
三本足で前進してその場を抜き出した。
昔は、悪霊に生命を奪われた例は、伝説にもあることから、
危ないところ島見い丘の悪霊から、ウプスーは、
自分の飼い牡牛の助けに生命拾いとなった。
牡牛は、その後長い年月かっていたが残念なことには、
病気でこの世を去ったので、現在の麓禎光氏の家の前の畑に葬って、
毎年冥日に供養の行事を行ったが現在はやらない。
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